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ユーザーインタビュー ~JAXA 森田教授に聞く(前編)~

2017/02/15

インタビュー

ユーザーインタビュー ~JAXA 森田教授に聞く(前編)~

ニュース等でご覧になった方も多いと思いますが、昨年の12月20日に「イプシロン」ロケット2号機が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所より打ち上げられ、無事成功しました。今回のシンキージャーナルでは、そのイプシロンロケットのプロジェクトマネージャであるJAXAの森田泰弘教授へのインタビューをお送りします。

打ち上げから日も浅い年明けのある日、森田先生の研究室を訪れ、弊社取締役の石井がインタビュアーとしてお話を伺いました。イプシロンの開発にまつわる貴重なお話をじっくりとお聞きすることができましたので、読者の皆様にとっても興味深い内容になっているものと思います。是非ご一読ください。

たっぷり読み応えがありますので、前編・後編に分けてお送りします。

インタビュアー 取締役応用技術部長 石井 徹

イプシロン2号機 -その進化の中身とは

イプシロン2号機の打ち上げ写真
※イプシロン2号機の打ち上げ写真(提供:JAXA) 

まずは12月20日のイプシロン2号機の打ち上げ成功おめでとうございます。2013年のイプシロン初号機打ち上げの際には世の中でかなり注目が集まり、報道を通して沢山の人が打ち上げを目にしたと思います。そして今回12月に打ち上げられた2号機は「強化型」で、さらに進化したイプシロンだと思いますが、どういう点に違いがあるのかお聞かせいただけますか?

イプシロンロケットの開発コンセプトは「高性能でコンパクトなロケットデザイン」なのですが、その場合のロケットというのは本体だけではなくて、打ち上げるシステム全体のことを指しています。たとえば地上の「設備とか装置」、それから「運用」。運用というのは装置などを使って、あるいはロケットを組み立てる際にどれだけの人手とか時間を使うかということを指しています。それと「機体」。この3点セットを最適化するというのがイプシロンのテーマなのです。

試験機の時には、それらをいわゆる「モバイル管制」(ロケットの点検や管制を自動化・自律化し、パソコン2台だけで打ち上げを目指すシステム)等の導入によって大幅に改革しました。それはイプシロン固有のものではなく、ロケット業界全体の改革という意味があったのですが、今回の2号機は、ロケット本体そのものの改革に取り組んだのが一番大きなポイントだと思います。つまり、ロケットの「ご本尊」にも手を加えたということです。試験機の時には周辺、どちらかというと外堀でしたが、今回はまさに内堀を変えました。要はロケット本体の「高性能・低コスト・高信頼性」技術に挑戦したというのが大きいですね。具体的にいうと、ロケットの2段目を一新してロケットの全体性能をアップしたり、あるいは人工衛星を載せるスペースを拡大したりすることで、より大きくて本格的な小型衛星も打ち上げられるようになりました。

小型衛星というのもピンからキリまであって、本当に小さな小型衛星から、意外に大きなものまである訳です。意外に大きなものというのは地球を実際に観測して成果を得るような、民間がやるには相当大変なものですが、イプシロンではそこまでカバーできるようになりました。つまり、本当に超小型から大型に近い小型まで、幅広いスペクトルで対応できるようになったということです。試験機の時に既に変革した、より小さな設備で少人数・短期間で上げられるしくみ、つまり「機動性」にプラスして、今回は打ち上げる「衛星のダイナミックレンジを広げた」という点で2号機の意義は大きいと思っています。

初号機の時は、今おっしゃった「モバイル管制」などの導入で、周辺システムを改革することでコスト削減を図られ、信頼性も向上されたことと思います。しかし今回はロケット本体の改革、本丸に着手されたことで、今までの開発手法と違う部分や、新たに取り組まれた事柄があればお聞かせいただけますか?

トータルシステム、トータル設計をいかに最適化するかといった時には、コストを下げる、性能を上げる、信頼性を上げるなど、色々なテーマが入っています。それを実現するためのプロセスは幾つかあって、例えば周辺の産業の技術、つまり今まで宇宙とは直接関係してこなかったような業界のアイデアとか技術を宇宙と融合させること、それが一つのテーマなのです。要は宇宙産業と連携してこなかった産業の中に、ものすごい技術やアイデアがあるので、そことしっかり連携しようということ、それが、「モバイル管制」に繋がっているのです。言い方を変えると周辺の皆さんとの「共通項を最大化」するということです。つまりガラパゴス的な孤立した宇宙開発ではなくて、シンキーさんのような皆さんを含めて、応援団、プレイヤーを増やしましょう、宇宙を支える皆さんの裾野を広げましょうということを考えてきました。ただ、共通化できない部分は当然残る訳で、そこは我々の特殊技術として伸ばしていく必要があります。例えばまさにペンシルロケットから始まった固体燃料技術の積み重ねがあるので、それを伸ばしていきましょうと。今回の2号機では、その特殊部分が大いに前進しました。もちろんその中にも、周辺の皆さんとのアイデアの共通化というのは沢山あります。例えば部品の数をなるべく減らすとか。

JAXA_森田教授

それはロケット本体の中ですか?

ロケット本体の中です。皆さん(のような民間企業)の考え方とは共通する部分が沢山あって、部品の数を減らすことが性能向上と信頼性向上、低コスト化に繋がると考え、それに取り組んできました。例えばロケットとロケットを繋ぐジョイントですが、今までは信頼性最優先で、なるべく従来の技術を使うという考えに則って、アルミの組立構造を使っていました。飛行機でもジュラルミンの組立構造があるので、それを否定するものではないですが、これをCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の一体構造にすると、途端に軽くなり、製造もあるところから先は簡単になるというように、良いことがいっぱいある訳です。当然、信頼性も上がってくる。そういう取り組みというのも強化型の中には入っています。

あるいは、今言った部品の数を減らすということに似ているのですけど、製造工程をなるべくシンプルにするということが挙げられます。ロケットは作るのも結構足が長いし、特殊工芸だったりする訳ですね。工業じゃなくて「伝統工芸」(笑)。それの良い点もあるし、大事な部分はそれに頼るしかない訳ですが、そればかりに頼っていると、ロケットの値段は当然下がらない。従って、なるべく伝統工芸を汎用の工業製品に置き換えていく為に、今まで熟練の技に頼っていた作業をなるべく機械化して、自動に近いような姿にしていこうという取り組みもあります。

また、作り方だけではなく、部品とか材料そのものを、宇宙用の特殊品から汎用の工業製品に置き換えていくという取り組みもしています。よく挙げる例としては、ロケットの先端(フェアリング)、ここに一番熱がかかるのですが、そこに工業製品を使いました。そういうことを段々とロケット全体に広げていこうと考えていて、強化型でもそういう要素が入っています。

先生が過去に受けられたインタビュー記事で、(イプシロンの前身の)M-Vロケットの技術はかなり完成度が高かったという内容を拝見したことがあります。イプシロンロケットのプロジェクトに取り組む際、ロケット周辺のシステムは今までいじってなかったので、トライしたことがなかった周辺の産業技術を導入することに行き着いたということはイメージしやすかったのですが、ロケット本丸に関しては如何でしょうか?M-Vロケットで完成させたものをある意味一旦壊すというか、現状否定しながら進めることになると思います。JAXAの組織体の中で、それを進めていく上でのご苦労はあったのでしょうか?

M-Vロケット
※M-Vロケット(提供:JAXA)

それにはある意味皮肉な追い風がありました。というのも、M-Vは引退ですと先に言われた訳です。皆さんの技術開発と宇宙ロケットも多分同じだと思うのですが、通常、ある製品が売れなくなってから次の製品の開発を始める訳では決してなくて、今まさに売れている最中に次の製品の開発を始めて、売れなくなった時に次の製品が売れるようにしていく訳ですよね。ある意味、開発というのはシームレスに連続して行われる。それまでのロケット開発もそうだったのです。Aが終わる前にBを考え始めて、Bが終わる前にCを考え始めて。だから技術も開発も全部繋がっていたのです。だけど、M-Vは先に終わってしまったので、何もなくなった。そういう時に研究者の皆さんだったらわかると思うのですが、それをチャンスと思うのか、悲劇と思うのかによって全然違ってきます。我々はチャンスだと思ったのです。今までのロケットを一旦リセットして、自由な発想で何でも考えていい、これはチャンスなんだと捉えたのです。それで「モバイル管制」みたいな、非常に斬新なアイデアも実現できたのです。M-Vが生きていたら、これは難しかった。立派な伝統があるが故に、なかなかそこから抜け出せないというジレンマがかつての我々の中にはありました。「はやぶさ」を打ったM-Vはいわば固体ロケットの集大成ですが、我々若い研究者からするともっとやりたいことがいっぱいあったのも事実です。しかし、やはり伝統のしがらみが大きかった。でも、イプシロンになって、突然、なんでもできるようになった。極端に言うと、偉い先生の言うことも聞かなくていいようになりました(笑)。
イプシロン以前の管制室の様子
※イプシロン以前の管制室の様子 (提供:JAXA)

それは、そういう体制的な変更もあったのですか?

体制変更もありましたよ。それまでは固体ロケットというのは設計から開発まで全部ここ(相模原)のキャンパスで作っていたのですが、つくばに本籍が移りました。研究の母体は依然ここなんですが、開発の管理はつくばで行われるということで、なんていうのか、参加する人の経験値が変わったというか、要は今までのことを何も知らない人が半分入ってきました。知っている人が半分、知らない人が半分、だから私からすると新しいことをやるには最適な環境になりました。実際やり易かった、その部分では。

ただ、一方で、最初に私が言い出した「モバイル管制」は装置や設備を小さくするとか、開発や組み立てにかかる時間を減らすことになり、 もちろんそれは良いことなのですが、ものすごく抵抗も大きかったんです。要するに人減らしと感じた人もいて、そんなロケットを作ってどうしてくれるんだという、そういう抵抗が結構あったのです。だからイプシロンに関しては実は身内の抵抗のほうがとても大きくて、そうじゃないんですよと説明するのが大変でした。ある設計が始まってからロケットを打つまでの長いスパンの中で、内之浦(鹿児島県にあるロケットの射場)に行ってロケットを発射するという最終作業をする人の数は減らさないといけない。打ち上げの時は、衛星の人も参加するし、マスコミの人も、一般の応援団の方も参加するので期間も短いに限るのです。だけど前半の工程作業というのは依然、開発の一番大事な部分であり、人が担う部分でもあるので、ここでみんながより新しいことを考えられる環境を作ろうと思っていました。でもみんな、工程の最初から最後まで人が減ってしまうと誤解して、もう僕はいらないんですか、みたいな感じになりました。そうじゃなくて、もっと大事なところで活躍してくれればいいんですよという説明にかなり時間がかかりました

そのような新しいことに取り組む際に、恐怖心みたいなものはなかったのでしょうか?

ありましたよ。こんなことまでやると言って、失敗したらどうしようかって。しかも、(試験機の時は)発射の19秒前に止まった訳だから、これかと思いましたね(笑)。だけど、我々研究者は、良いか悪いかは別にして、色々な苦労とか失敗を重ねた結果としてイプシロンに挑戦している訳ですよ。色々新しいことに取り組んでいるんだから、簡単にいくはずないんだっていう思いは元々あったんですよ。だから発射の瞬間まで絶対に気は抜けないっていう、そういう思いはありました。だからあの19秒前に止まった時も、すぐに何が起こったかわかったのですが、これは最後の試練なんだなという気持ちはありましたね。あんまり驚かずに済んだというか。まあ、打つ前で良かったというのはありましたが(笑)。

イプシロン試験機打ち上げ後の管制室の様子
※イプシロン試験機打ち上げ後の管制室の様子(提供:JAXA)

話を戻すと、その新しいことをやれる環境が整ったという追い風と、やり過ぎたものだから抵抗されるという逆風と両方あったということですね。でも、皆さんだったらおわかりだと思うんですけど、それが研究の醍醐味とも言えますね。特にロケット開発は国が主導してやっているもので、しかも税金を使っているので、なかなかチャレンジというものがしにくい環境なんです。そんなことできるんですか、できる材料をちゃんと示してください、そして100%納得できたら次に行っていいですよっていう、そういう世界だから、なかなかチャレンジの度合いが、我々が思った通りにはいかない環境だったんですよ。それが何故かM-Vはもうおしまいだっていうのが、まったく我々にとっては良い方向に働いてくれたっていう部分はありましたね。

なるほど。試験機では周辺システムに、そして2号機で本丸改革に着手され実績も出された訳ですね。これらの改革により環境的な部分、つまり反対勢力といいますか、組織上の仕事のやりにくさ、進める上でのご苦労のようなものは払拭されたのでしょうか?

払拭されましたね。だから今、JAXAの中でも、少なくともイプシロン周辺は、チャレンジ精神がない人はダメだという雰囲気がようやく醸成できたという感じです。

これからのイプシロン-更なる飛躍をめざして

ジオスペース探査衛星ERG(あらせ)
※ジオスペース探査衛星ERG(あらせ)(提供:JAXA) 

そうしますと、次のイプシロンに対してはどのようなチャレンジがなされているのでしょうか?

色々ありますが、イプシロンの一番大きなビジョンというのは、皆さんの「宇宙への敷居」を下げましょうということにあって、それは宇宙に挑戦したい人の数を増やすとか、挑戦できる機会も増やしたいということなんですね。そのために何が必要かというと、2つあります。

まず、ロケットのコストを下げることによってロケットを打ち上げる頻度を上げるということ、それからもう一つはそもそも宇宙とは何かも知らずに人工衛星を作る人が今後増えてくるので、そういう人にどうやって機会を提供していくかということです。例えば後者でいうと、今まで人工衛星を作ったこともないとか、宇宙で何を挑戦していいかもわからないけど、興味がある人にどんどん出てきてほしい。そうなると、小さい衛星になると思います。イプシロンは小型衛星専用のロケットではありますが、今回打ち上げたERG(あらせ)は、350kg位ある訳です。それ位の重さの人工衛星を作るのは並大抵のことではなくて、そういう人工衛星しか上げられないとなかなか宇宙への敷居は下がらない。そのために今、我々が何をしようとしているかというと、超小型から小型まで、イプシロンに沢山の衛星を載せて打つという、そういう計画を立てています。これは「革新的衛星技術実証プログラム」といって、イプシロンの4号機からスタートして継続してやる予定です。要は数百kgのメインの小型衛星と、50kg位の超小型衛星、それから更に数kgのマイクロサットみたいな超超小型衛星や、いわゆるCubeSat(キューブサット)みたいなものをまとめて相乗りで打てるようなしくみを作りましょうと、そういうことを考えています。それによってとにかく宇宙への敷居をどんどん下げますと。

そして、前者のロケットのコストを下げるという話、これはもう我々が最初からずっと計画していたことですが、今、イプシロンの2段目が新しくなりました。これは高性能・低コストな2段目なんです。で、次のステップは1段目です。これはH -ⅡAロケットの後継であるH3ロケットにサイドブースターが固体ロケットとして付きます。それはSRB-3というニックネームがついているんですけど、それをイプシロンの1段目にしようと開発を進めています。イプシロンで開発した高性能・低コスト技術をH3ロケットに生かして、H3ロケットで製品として開発されるSRB-3をイプシロンに使うことでロケット開発がようやく有機的に繋がると思っています。という訳で、1段目が新しくなり、高性能で安くなります。なので、残るのは3段目とか、構造とか、アビオニクス(電子機器)とかなので、それらを次のステップで低コストにするという、そういう段階的な計画なんですね。因みにこの1段目を新しくしようという、H3ロケットとの連動開発を「シナジー開発」と呼んでいて、2号機で2段目が新しくなり、シナジーで1段目が新しくなり、この先、機会を捉えて3段目やアビオニクスや残りの部分の低コスト化も完了して全部揃うと、低コストのイプシロンが出来上がるということです。

なるほど、技術そのもののコストダウンを今後とも追求するのと、あとはどうやって利用幅を広げていくかということの2本立てなのでしょうか?

そう、おっしゃる通りです。

イプシロンロケットと競合するようなロケットは現時点ではありますか?

現時点では、ちょうどこの小型衛星のサイズのロケットってないんですよ。ライバルと言われているヨーロッパのヴェガ(VEGA)は、M-V級よりもまだ大きいですから。今後世界で当然伸びていくだろうと言われているのが、大体500kgサイズの小型衛星なんですけど、それはイプシロンにはばっちりなんですが、ヴェガにはちょっと小さ過ぎる。だからヴェガでそういうのを上げようとすると、2個まとめてとか、ややこしい話を考えないといけないので、多分、しばらくはイプシロンがコストダウンを続けて小型衛星のニーズを引っ張るような世界を作れば、独走状態になるんですね。ただ、それだけで儲かると思ったら甘い話で。

それはどうしてでしょうか?

当然、同じようなことを考える人は出てきますから。

でも、技術開発は足が長いですから、そんなに一朝一夕にはできないのではないでしょうか?

そう、急にはできない。あと、大きくするのは割合、簡単なんですよ。でも、大きいものを小さくするのは実は非常に難しくて、ヴェガをイプシロンサイズにしようと思ったら、多分、彼らの技術力を考えると10年近くはかかると思うんですね。だから我々としては、小型には小型のいいところがあるんだというメリットをみんなに認知してもらって、どんどん小型衛星を上げていくことが重要だと思っています。小型は小型だから安いのであって、小型があまり大きくなると高くなってあまり具合がよくないってことにみんな気づくべきだと思うんですよ。

なるほど、加えて衛星を小さくする技術も出てきたので、そういったロケットビジネスも可能になったということでしょうか?

そうです。だから、宇宙に今まで参加してこなかった皆さんとどんどん連携しましょうという背景には、やはり民生の最新の部品、材料を使いたいというのが当然あって、それはより小型・軽量・低コストな訳ですよね。一方、宇宙用の認定部品というのは、信頼性最優先だから、一世代、二世代古い部品なので、大きくて、重くて、高い。そういう世界を変えようとしたら、どんどん民生の人達と連動してやっていく必要があるのです。それは衛星の世界のほうが一歩進んでいるんですよ。だからどんどん小型になっていく。極端に言うと、スマホで色々なことができる世界が人工衛星の中でも起きようとしているのです。小さくするのが今までは大変で、「小さくする開発」というのがあったのですが、今は逆に最新の部品を使うと自動的にどんどん小さくなっていくので、そういう動きが今後も加速するのは目に見えています。だから黙っていても人工衛星が小さくなっていくのと、小型のロケットを活用するっていうのが今、接点になろうとしているんですよね。

我々の会社の悩みどころでもあるのですが、新しい技術、すばらしい製品ができた際に、ビジネスにどう結びつけるかという苦労が結構あります。先程うかがった中に、海外に自分たちのビジネスを売り込むお話もありましたが、JAXAさんの中でこういう方法で市場開拓しているとか、または将来の宇宙ビジネスを見据えて取り組まれていることなどはございますか?

JAXAは、その辺、大きくは打ち出せていないんですけど、ロケットの魅力っていうのをいかに発信していくかが重要だと思っています。今、おっしゃったように、良いものを作れば売れるという昭和の時代はもう終わって、お客さんのニーズも多様化しているし、時代の変化も早いので、何がどう売れるかというのは予測不可能です。また、一旦売れてもそれがどれだけ長く売れるかなんて全然保証されたものではないですよね。一方で、ロケット開発というのはそんなしょっちゅうできるものではないということを考えると非常に難しいんですけど、少なくとも言えることは今までは性能とコストだけでロケットの魅力を述べていましたが、それだけでは足りないということですね。宇宙への敷居を下げようと考えたら、色々な人が宇宙に入ってくる。そうすると、色々な人の多角的なニーズに応える必要があるという発想が大事で、要するに「ユニバーサルデザイン」ですよね。簡単に言うと「付加価値」な訳です。どれだけの重さの衛星をいくらで上げられるかが出発点であることには違いないですけど、それだけではないですよと。他にもいっぱい魅力的な部分、お客さんに喜ばれる部分があるからそれを訴えていこうと考えています。

例えば、人工衛星だと、ユーザーにとっての使い易さというのがまずあって、それは物理的な話からすると、ロケットに載った時の機械的な環境とか、あるいは軌道に投入する精度ですね。機械的な環境というのは「乗り心地」のことなんですけど、大雑把に言うと3つあります。「振動」と「衝撃」と「音響」。イプシロンの試験機で「振動」と「音響」は世界最高レベルに上げて、次の3号機で「衝撃」も世界最高レベルになる計画なんです。すると「乗り心地」は世界のどのロケットにも負けないものになります。で、「軌道投入精度」に関しても、試験機の時にデビューしたPBS(ポストブーストステージ)という小さな液体エンジンを積んだ4段ロケットを積んでおくと軌道投入精度がばっちり上がります。それはもう1号機で実証済みで、これを使うことで軌道投入精度も世界のどのロケットにも負けないレベルになったので、そういう意味で性能とコストだけではなく、「乗り心地」とか「軌道投入精度」とか、その他の大事な部分でもイプシロンは勝負できるのです。

あとはもうちょっと細かい話をすると、「レイトアクセス」ということがあります。これは人工衛星をロケットに載せてから何時間で打てるかという「機動力」のことなんですけど、これは短いほうがいいんです。人工衛星がロケットに載ったらすぐに打つのが一番いい。お客さんが載ったらすぐ発進です。何故かというと、科学の観測の目的のために様々な装置を積んでいるのですが、真空状態にしておかないといけない装置や極低温に冷やしておかなければいけないものなどが載っていて、直前まで真空ポンプで引くとか、冷凍機を冷却するという作業があって、それは発射の直前までできれば一番性能が上がる訳です。それが例えばロケットに衛星を載せて冷凍作業を終えてから打つまでに6時間もかかっていたのでは温度が上がってしまいますが、イプシロンはそれが3時間なんです。これも世界最短で、隠れたメリットと言えます。人工衛星の人からすると、「乗り心地」、すぐ打てちゃう「機動性」、そして「軌道投入精度」と、すごく大きなメリットが沢山あることになり、イプシロンというのは実は陰ながら世界最高レベルなんです。

PBS(ポストブーストステージ)
※PBS(ポストブーストステージ)(提供:JAXA)

ユーザビリティーNo.1ですね。

そう。あとは情緒的な部分でいうと、いわゆる「ホスピタリティー」ですね。衛星の要望であれば何でもやりますよ、というような。世界のロケットにはそういう発想はあまりないんですよ。その点、イプシロンは元々、この宇宙研(宇宙科学研究所)という相模原のキャンパスで衛星とロケットを合同で開発してきたという伝統に則っています。そういう文化なんです。

まさにユーザー第一主義ですね。

ただし、それをやり過ぎるとコストが上がるので、重々気をつけなければいけない。

我々もそれは、常に心得なければいけない部分と考えております。

という訳で、いわゆる「特殊な要求」があったりするんですよね。そういうのにとことん柔軟に対応できるっていうのが我が国の小型ロケットの一番の特長だと思うので、それを世界に発信したいですね。

なるほど。やっぱり新しいことにチャレンジされるにしても、ユーザーが求めていることは何なのかを常に考えていらっしゃるということですよね。

宇宙研の元々の生い立ちで、先程言ったように衛星とロケットを一つの組織で作っていたというのはものすごく大きいですね。でもこれ、実は今、時代の流れになろうとしていて、ボーイングみたいなロケットや飛行機を作っている会社が小型衛星を始めようとしているんです。それで、結構ヨーロッパでもロケットメーカーが小型衛星を自分達で作るという動きが出てきているんですよ。私は以前から言っているのですが、やがてロケットと衛星の境目がなくなる時代が来ると思っています。ロケットと衛星をほとんど一体で設計するような、そういう時代がやがて来る。世界の動向を見ていると、どうもそういう時代になりつつあります。

世界がJAXAを追従してきているのですね。

追従してきている。だからライバルはこれから増えると思いますが、でも一朝一夕に身につくことではないんですね。開発に対する姿勢なので。教育が一番大事っていうかね。口でいくら衛星が一番大事なんだって言ってもなかなかすぐに身につくものではないですからね。あとは、付加価値という意味では、我々の視点というのも重要で、ロケット開発というのが先に繋がるような革新技術を含んでいないと開発にはならない、というのはいつも頭の中にあります。

後編に続く)

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