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スピルリナから電磁波吸収に期待の新素材を 彌田教授に聞く

2019/04/24

インタビュー

スピルリナから電磁波吸収に期待の新素材を 彌田教授に聞く

革新的な透過膜の研究など多彩な材料開発で世界をリードする研究者の一人である彌田(いよだ)先生。最近AR-100をご購入いただいた研究室にお邪魔してお話を伺いました。

彌田先生のご研究内容について教えてください。

ナノ・マイクロの材料科学、具体的には生物の機能的な構造を異種材料に転写する「バイオテンプレート」研究を行なっています。
蓮の葉の撥水性など、生物が持つ機能の構造を分析、技術開発につなげるバイオミメティックスが注目されていますが、バイオテンプレートは構造の模倣ではなく、生物そのものが持つ構造をそのまま転写利用するのです。工業的には量産が難しい複雑な構造も、バイオテンプレートを利用することで量産にも期待が持てます。

実際に研究に使っている微生物の一つに、アフリカ・チャド湖原産の微細藻類「スピルリナ」があります。その名のとおり螺旋状(Spiral)に繋がった多細胞で、大きさは100ミクロン、直径が3、40ミクロン(髪の毛の2分の1から3分の1くらい)です。近頃ではスーパーフードとしてサプリメントもありますので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。JAXAも有人衛星の食糧として研究しているようですね。

スピルリナ自体は、炭酸ガスを与えておけば光合成によって簡単に増えます。成長する過程でランダムに折れて2個になるということを繰り返します。約1週間で同じ形のものが約250個に増えますので、研究室の環境でも簡単に生成できる“究極のテンプレート素材”ですね。
培養環境研究で、螺旋ピッチの制御も可能にし、天然の物は左巻きですが右巻きも培養しています。

私は、このスピルリナの螺旋構造をバイオテンプレートとして、無電解めっきで金属マイクロコイルを生成しました。無電解めっきは複雑な形状の金属以外のものにもめっきできる技術ですが、生き物そのものの形状を変えず、無電解めっきをするのは結構大変でした。2年程かかっています。
まず、スピルリナをグルタルアルデヒドという薬品でホルマリン漬けのようにします。スピルリナは死んでしまいますが、細胞を架橋する効果で細胞の形がそのまま保存できるのです。その上に無電解めっきをすると、何億という大量の金属マイクロコイルを生成します。(下写真 左)

瓶に入った何億もあるスピルリナの金属マイクロコイル(左)と顕微鏡写真(右)
※ 瓶に入った何億もあるスピルリナの金属マイクロコイル(左)と顕微鏡写真(右)

ここまで精密なコイルをピアノ線のような針金で1個1個作ったら大変なことですし、高くつきますよね。しかし私が作ったコイルの材料は、植物と回収率の高い金属なので、モノづくりとしてエコなのです。

金属マイクロコイルが簡単に量産できると可能性が広がりそうですね。その先のシナリオはどのようなものですか。

「このコイルを作りました」だけではまだまだで、次はどのように活用するかですよね。
コイルには自己共振周波数というのがありまして、コイルが小さくなるほど共振する周波数が高くなります。スピルリナの金属マイクロコイルはとても小さいので、とても高い周波数で共振します。もし、このコイルを分散したシートに、光や電波など電磁波を当てたら、中のコイルが共振動を起こして電波吸収すると考え、その研究を進めています。

※金属マイクロコイルが分散したシートと(左)と彌田先生のご研究の概要図(右)
※金属マイクロコイルが分散したシートと(左)と彌田先生のご研究の概要図(右)

実験の結果をお見せしましょう。

実験結果グラフ

縦軸がtransmittance(透過率)、横軸はfrequency(周波数)テラヘルツ波領域です。分散したシートの後ろから電波が来て、表に漏れてきた量の割合です。
次々世代の通信帯域である、ミリ波、テラヘルツ波においても高い電波吸収と遮蔽機能をもつことがわかります。

皆さんの使っている携帯電話の周波数は1GHz、2GHzです。高速道路に乗るときのETCは5.8GHz、Wi-Fiが2.5GHz、5.8GHz、自動車が自動運転するときの車載レーダーの周波数は世界標準で77 GHzです。
次々世代の中心周波数は、300GHzと考えられています。つまり今の携帯電話の300倍です。
周波数が高いということは、小刻みに震えて情報量が大きいのです。例えば4Kの2時間ものの映画が10秒程でダウンロードできるということです。全く世界が変わりますよね。

電波の利用状況の図
ただ、これからの高速大容量情報通信というと便利なことばかりではありません。電子機器は電波に弱いため、誤動作するなどの懸念があります。
例えば、病院で携帯電話を使用禁止という時代がありましたね。今はうまく電波をシールドできるようになったので、さほどきつくは言われないケースもありますが。飛行機では、一番大事な離着陸時に障害があったら困るので、今でも通信機器の電源を切るように言われますよね。
今後、社会インフラがワイヤレスになってくると、電波障害や機器に対する障害について、様々な課題が出てくるでしょう。まだ詳しくは分かっていませんが、健康への影響もゼロではないのです。

そこで、電波の利便性と人間をうまくなじませるような社会インフラをつくるために、電波を吸収する作用を持った素材の需要が高まってくると考えています。

電波吸収の塗料というとフェライトが有名ですが、フェライトはさほど高い周波数は吸収しません。ギガHzか、もう少し下ぐらいまでで、自動運転の車載レーダーのような高周波数には追いつかないのです。
次々世代の通信帯域である、ミリ波、テラヘルツ波においても高い電波吸収と遮蔽機能をもつ新素材が必要になるでしょう。
スピルリナの金属マイクロコイルを分散したシートは、マイクロコイル中の自由電子が動いて、フェライトの対応周波数より10倍100倍、1000倍高くても追随できます。
この分散シートは今後の電磁波の飛び交う社会を救う、新素材として期待がもてるのです。

ご研究のなかで、シンキーのミキサーはどのように使われているのでしょうか?

プラスチックが溶けた有機溶媒の中にコイルを分散させ、厚さ1mm程度の薄い膜をPETフィルムの上に塗って実験しています。電波吸収の特性を確実に出すには、エポキシ樹脂に我々のニッケルマイクロコイルを何%入れたなど、何パターンも作成し、電波吸収の測定実験をしていかなければなりません。まずは実験用にハンドリングができるしっかりとしたパネルのようなものが必要になります。
成形する樹脂は粘度がとても高いので、実験室でどう混ぜようかと悩んでいました。周りの人に相談したところ、塗料メーカーさんなどでは、皆さん“練太郎”を常設しているという話を聞きました。そこで装置を持っているところで試させてもらったところ、たちどころに混ざったのです。早速研究室で購入しました。
スピードも早いですし、樹脂の中にこのコイルを均一に分散することもできます。まだ導入して数か月ですが、既にかなりの数のパネルを作りましたよ。

今は実験用に固い樹脂ですが、シリコン樹脂のような柔らかいゴムや軽い素材も試していきたいです。もちろん将来的には、くるくる巻けるような設置しやすいシートの作成も考えています。

あわとり練太郎AR-100と彌田先生。

他に手掛けていらっしゃる、膜材料研究についても教えていただけますか。

互いに混ざらない親水性と疎水性のポリマーを一点で結合させることで、数十ナノメートル周期の規則的なミクロ相分離構造を自発的に形成します。
液晶性の導入や加熱処理などの工夫を実施することで、直径10ナノメートルの垂直な筒状の孔構造を規則的かつ高密度に配置した膜を作ることに成功したのです。

ポリマーに孔をあける、シリコンに孔をあけるなど、色々試しました。逆の構造も出来ます。ポリマーをエッチングしたときに、無機化合物などを入れたら棒が出来ますね。銀のロッド、シリカのロッド、酸化物、高分子の……。孔を掘るとか、立てるとか、その大きさは全部ナノメートルです。

今までの膜は垂直貫通ではなく繊維が絡み合った隙間を物が通り抜けて、その隙間より小さいものは通るけれど、それより大きいものを通さない構造です。だから、目詰まりをおこすのです。
しかし、この膜は両面で完全に開口しています。しかもこの孔は分岐もなく垂直貫通で、直径が全部一緒なのです。入り口で入るか入らないかだけなので、入ったら綺麗に抜けるし、入らなかったら、横に流れる。そういう狙ったものが通る理想的な膜です。
さらに、まっすぐな物だけではなくて、塗るだけで階層構造を作ったりして、後で構造を操作するポスト機能化ということをしています。
そういった技術も開発しており、どの陽イオン交換の膜を希望しているのかを伝えてもらえれば、特定の試薬を使って構造を変えます。つまりユーザーが工夫しやすいようなユニバーサルなテンプレをつくっています。
用途開発をするために膜を扱いたい人がいっぱいいますが、自分で設計したいと思ってもなかなかできません。試験研究用の膜の提供をここでやっています。この膜を使うと、お試しができます。お試しからこの膜よりももっと目的にあった物に持っていけるのです。実験室で出来る程度の生産はできます。原理実証はできていてあとは生産です。これを大量に売りたいです。ロール toロールでやるのです。賛同者を募集しています。(笑)

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<インタビューを終えて>

高分子化学出身の先生ですが、スピルリナという生物をバイオテンプレートとして、めっきの化学で「金属マイクロコイル」を作成され、そのコイルの特性から電波吸収という応用物理の最先端へ。社会インフラの問題にと様々な分野を融合し、1たす1を10にも100にもと新しい機能材料の研究への熱意をうかがうのに時間がたりないほどでした。これからくる高速大容量情報通信社会に先生の開発した新材料が私たちの生活をより豊かにしてくれる未来が想像されました。その研究にシンキーのあわとり練太郎AR-100が活躍していること嬉しく思います。今後の先生のご研究もずっと注目していきたいと思います。

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彌田 智一 教授 プロフィール
<ご研究職歴>
1984-1991 京都大学大学院工学研究科分子工学専攻 助手
1991-1993 米国アルゴンヌ国立研究所化学科 研究員
1994-1996 (財)神奈川科学技術アカデミー
橋本「光機能変換材料」プロジェクト 副室長
1996-2002 東京都立大学工学部工業化学科 教授
2002-2016 東京工業大学資源化学研究所 教授
2010-2017 JST-ERATO彌田超集積材料プロジェクト研究総括
2016-2017 東京工業大学 科学技術創成研究院 教授(超集積材料ユニット)
2017- 同志社大学ハリス理化学研究所 専任研究所員(教授)

<受賞学術賞>
1.電気化学会進歩賞(佐野賞) 1991年
2.高分子学会研究奨励賞 1991年
3.文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門) 2007年
4.高分子学会賞(科学) 2009年

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