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本格的な材料づくりを美大生が学ぶ?!~キャンパスを訪ねて~

2019/09/27

インタビュー

本格的な材料づくりを美大生が学ぶ?!~キャンパスを訪ねて~

あわとり練太郎はあらゆる業界でご利用いただいている装置ですが、時には「なぜこちらに??」と、思いもよらない現場でご活用いただいている事例があります。
今回は初めて美術大学にお伺いし、知られざるアートの世界と練太郎の関係を教えていただきました。100年以上の長い歴史をもつ女子美術大学の日本画専攻・宮島先生にインタビューを、そして尾藤先生には授業を見学させていただきました。

美術大学で練太郎が使われているというのは、とても興味深く意外でした。どのような用途でお使いですか。

(宮島先生)女子美術大学には自転・公転ミキサーが2台あります。1台は研究用に、そしてもう1台は「顔料創造ファクトリー」で学生たちが絵具作りに使っています。

顔料創造ファクトリー

本学に導入したのは、橋本弘安先生(現 女子美術大学名誉教授)で、かれこれ17,8年前のことです。その4,5年後から橋本先生と尾藤先生が中心になり人工岩絵具の研究開発のため頻繁に活用するようになりました。橋本先生は日本画家で、岩絵具(いわえのぐ)や天然顔料の研究の第一人者でもあります。また粉体工学会会員でもあり、粉体工学の世界では異色の存在として知られています。

日本画では、古くから岩絵具が使われてきました。石を砕いて膠(ニカワ)に混ぜて使うものなのですが、先生はこれを物理的・科学的に考察しながら授業を進められました。造形材料そのものを美術の表現の根源として捉えていくことを学生たちに伝えてこられたのです。

藍銅鉱と孔雀石

※写真左:岩絵具は、藍銅鉱(群青色)や孔雀石(緑青)など自然界に存在する有色の石を細かく砕き、膠などと混ぜ絵具として使われる。
※写真右(藍銅鉱と孔雀石の分級):群青ひとつとっても粒子サイズにより色合いが変わってくる。細かい粒子は色が薄く、粗くなるにつれ濃い色になり、一つの石からグラデーションで10色ほどの色を作ることが可能。(細かい絵具は粒子表面の乱反射が多いため白っぽく見えることによる。逆に粗い絵具になるほど色が暗くなる。)
また、膠と石粉を混ぜてから、和紙や絹に塗りつけた時の光の反射、盛り具合、石そのものがもつ色味により異なる特徴が出るところも、独特な進化を遂げてきた岩絵具ならではのおもしろさだとか。

絵画というと、何を表現するかというところに終始してしまいがちだったり、それ自身が個人的なことであったり、時代と共に変わりながらも繰り返すようなことにとどまってしまうところがありますが、そこに何か違う視点が入って美術を見るというか・・・。そういう意味でも橋本先生が取り組まれてきたことはすごく面白いことなのだと思います。

「顔料創造ファクトリー」では具体的にどのようなことをされるのですか

ここは日本画・洋画専攻の学生自ら絵具作りができる工房で、2年程前に設立されました。練太郎以外にも、粉砕機やロールミルなど様々な装置を導入しています。

ファクトリー内の練太郎と色見本

※写真左:普段ご使用の装置は現在修理に入っているため、代替機の練太郎が。
※写真右:絵具のカラーサンプル。カラフルでキレイです!

学生は「絵具は普通に売っているもの」「チューブに入っているのが絵具」と思って入学してきます。しかし古典的な技法に加えて、装置などの先端技術を使いながら行う授業を通じて、次第に絵具も工業製品の一つであることを理解していきます。このような古典と現代技術を結びつけた授業の在り方は、女子美独自の分野であると思います。

今日はちょうど洋画専攻の授業で、学生が「マイ油絵具」の作り方を学びます。練太郎も使用しますので、実際にどのように使われているのかも、後ほどご覧になってください。

こちらにも異色の先生が・・・

本日の授業を担当される尾藤先生もまた、美大の先生としては異色の経歴の方です。油絵を描かれていたのですが、まず理科大(東京理科大学)、その後ムサビ(武蔵野美術大学)を出られ、卒業後は油絵具メーカーさんなどいろいろな企業に勤められました。化学に加え絵画の材料の知識も持たれているという、本当に貴重な先生です。

講義中の尾藤先生

※写真:顔料創造ファクトリーで学生に指導中の尾藤先生

テンペラなど西洋技法も研究されていましたので、今日の授業もそのような内容になります。尾藤先生によると、油絵具、顔料というのはいかに細かくするのかという歴史だそうです。

油に関して、私はあまり詳しくないのですが、技法として油絵具が求められた表現、現代に合う絵具に変化していったところがあるらしいのです。ゴッホなどはマチエール(作品の材料がもたらす作品の表面の絵肌の効果)がすごいですよね。20世紀に入るとますますあのような表現に進んでいくのですが、それまでの油絵具はもっと透明感があって、油を重ね、色を重ねて表現する技法なのです。レオナルド・ダ・ビンチが描いていたものはグレイジングといって、グレーで描いておいて上に肌色を重ねていって色を出すというものです。尾藤先生はとても古典にこだわりをお持ちなので、この辺りが授業のポイントでもあります。「古典の油と今の油は違うんだよ」「だから今の絵の具を使ってもあのようには描けないのだ」ということを説明されています。先生の授業を受ければ学生もきちんと理解します。

「自画像」と「モナ・リザ」

※写真:いずれもWikipedia より引用 「自画像」 「モナ・リザ

ちなみにこのファクトリーを日本画専攻でも使っていますが、日本画では「石を砕いた粒子」を楽しむというところがあります。20年ほど前に、尾藤先生が絵具メーカーとして絵具の授業をされたことがきっかけで、橋本先生と知り合われました。それ以来様々な取り組みをされてきているのですが、当時お二人は洋画・日本画それぞれの絵具の捉え方に違和感と興味を持たれたと聞きました。お互いがお互いの専門分野を必要としていたといいますか・・・。まさしく二人三脚で、ここまで作り上げられたのだと思います。

ところで、女子美大では人工岩絵具を開発され、宮島先生も関わられているそうですね。

はい。橋本先生と尾藤先生が開発されたものですが、私も関わるようになり「エコ岩絵具21」という製品の開発から、商品として絵具を卸すところまで行っています。これまで築き上げられたことを大事に受け継ぎながら広げています。

岩絵具を取り扱う喜屋さん店頭

※写真:実際に販売されている「エコ岩絵具21」
東京都文京区の日本画材料「喜屋」様の店頭にて。色の種類がとても豊富です!

私は非常勤時代を含めて女子美は8年目ですが、以前は技法材料研究はメインではありませんでした。絵が中心の生活をしていて、どうしても表現が偏ってくることもありました。そのような中でこちらにお世話になることになり、橋本先生のご指導の下でいろいろなことに取り組むことになりました。このエコ岩絵具も大きな成果の一つです。

初めは装置をどうやって使うのかなど、分からないことも多かったですね。それまで化学のことからは逃げていたつもりが、行った先でまた出会ったと言いますか。逃げていたつもりが近づいていたという状況でして(笑)
でも、返って新鮮にいろいろなことが自分の中に入ってくるような気がしています。発見しながら、私も一緒に勉強している感じです。

美大の教授でありながら、電子顕微鏡を覗くとは・・・

まさか自分が電子顕微鏡を覗くなんて夢にも思いませんでしたが、今では私も粉体工学会に所属していますし、美術系の大学の先生とのお付き合いよりも粉体系の先生とお話をすることの方が多くなってきました。ありがたいことではありますが、だんだん皆さんがおっしゃっていることが少しずつ分かり始めているのが怖い・・・(笑)

しかしこういうことを抜きにして、絵は描けないところもあるのだと思います。経験では分かっていることですが、例えば絵具の剥落や割れの問題があるのですが、その原因は何なのか。やはり粉の並び方などは、とても重要じゃないですか。

粉体工学会でもおもしろいことが沢山あります。昨年は200人を超える方々にこの女子美に集まっていただきシンポジウムを開催しましたし、今年は粉体ワークショップを開催しました。話を聞くだけではなく人工岩絵具に触れてもらうなど、研究の成果を体験する形式でコミュニケーションを取れる場となりました。芸術と粉体工学は、お互いあまりにも向いている方向が違うので、出会った時に発見があり思いもよらないところに興味を持ちあえるものなのではないかと思っています。ワークショップはそういうものも求めて開催しました。

芸術と粉体工業 冊子

※写真左:写真がふんだんに使われている冊子の表表紙。
電子顕微鏡を覗いて見られた世界がここに凝縮されています。
※写真右:冊子の裏表紙ではエコ岩絵具が紹介されています。
小石から天然岩絵具を作れるというキットも。気軽に「本当の色」「地球の色」を学べます。

人工岩絵具の役割とは・・・

元々岩絵具は岩を砕いて作られるものですので、無機顔料が多かったのです。すると体への影響などの問題があるのも事実です。例えば天然の朱は水銀の化合物です。昔の絵描きの健康面に少なからず影響があったことも指摘されています。

今の絵具は毒性のあるカドミウムを使ったものがだいぶ減ってきて、代りに有機顔料がかなり出てきています。日本画の世界でも、自然の色だけでは表現しきれないこともあるということで、ずっと研究がされてきました。そのこともあり人工岩絵具の色数は随分と増えてきています。この辺りは科学的な進化とかなりリンクしているのだと思います。

人工岩絵具は、どちらかというと現代の発想というイメージです。これは私が何度も言っていることなのですが、これを「入口」としてスタートするということですね。
18歳や20歳で美大に入ってきた学生にしてみると、日本画の世界というのは、リアルや再現性を追及していく西洋の絵画と比べると、地味な印象もあるのではないかと思います。
そこでまずは多彩な人工岩絵具を使ってみて、成り立ちを理解していけば、伝統的な日本画の世界にもどんどん惹かれていくということがあると思うのです。

「扇面法華経冊子」の模写

※写真:模写教育が充実しているのも女子美大学の特色の一つ。こちらは学部3年生が色彩画の模写として取り組んだ、国宝「扇面法華経冊子(平安時代)」。模写だけでなく、額装までしっかり仕上げられていました。とても見事です。

エコ岩絵具は、絵画教室の先生や学校、福井県の高校美術教員の研究会の先生方なども活用してくださっています。また、英語のみならずドイツ語、韓国語にも対応していますので、海外にも今後広がりを見せていくのではないかと思います。日本画そして岩絵具そのものの普及にも役立てられているようで、徐々に浸透してきている実感があります。

特にアメリカは、通常の岩絵具は毒性などの関係で輸出が難しいのですが、エコ岩絵具は毒性についてはクリアしている絵具ですので、先日もニューヨークで橋本先生がワークショップを開催されました。

日本画の面白さは、自然から作られた絵具の色数に限りがあるだけに、それを見る側が補完する余地を多く残している作品が多いというところだと思います。そして描く側もそこを楽しむというのが、一つのテーマというか日本画のおもしろいところだと個人的には思っています。

エコ岩絵具は窓口として使いやすい岩絵具ですので、そのような形でどんどん使われていく中で、日本画の魅力を伝えていきたいですね。

最後になりますが、美術大学で化学の分野を踏まえて指導されることについて、どのような思いがありますか。

学生たちは、本当に頑張って描いています。時には思いがけないようなものを作ってくれます。波もありますが、ここは人の表現の場なので、「こうすればこうなる」というものではないのですね。また、それらがそのままお金につながるかというと、そうでもないこともあるのかもしれないですが、表現のために若い情熱を傾けて頑張る姿というのは、とても尊いことなのではないでしょうか。答えのないところをずっと歩くようなものですからつらいのですが、それに意味があるというか、価値があるという。

私たちは表現を教えるというよりも、技術を教えるといいますか。そのようなことが返ってヒントになるということが確かにあるのだと思います。
橋本先生が、科学技術などを淡々と学生に提示し続けていらっしゃるということは、そういうことなのかと思います。あとは本人が選ぶのでしょうね。先生のマネになるのではしょうがないですし、自分の絵ではなくなってしまいますから。そういうときに、このように全く違う畑のものを見せてそこに興味を持つということは、そこで世界が拓けますよね。

化学的なものというと先端を行くイメージがありますが、これを美術に広げてこのような装置を活用するというのは、世間一般から見たら特殊なことなのかもしれないですね。

ものを作るためには、いいものを見る必要があると本当に感じます。自分の持っている価値観というのは年を取るごとにどんどんと変化すると思うのです。そのような中で変化やいろいろなものに美しさがあるということを、美大は大事にしているのだと思います。

「顔料創造ファクトリー」を見学 ~油絵具の簡易製造法~

この授業では、洋画専攻の学生さんたちが「マイ油絵具」を作る方法をワークショップ形式で学んでいらっしゃいました。その模様をご覧ください。

レシピと計測
※写真左:尾藤先生の「マイ油絵具」の秘伝レシピが配布されます。
※写真右:材料を入れた容器をデジタルスケールに載せる尾藤先生。「ここ、大事ですよ!」

練太郎に材料をセット
※写真左:バランスダイアルをセットします。重要性のご説明をいただいています。
※写真右:先生「うまくいくかな?」学生「なんだか怖い!」先生「怖くないよ~(笑)」

完成したマイ油絵具
※写真左:「はい!できました!」顔料、油メディウムと体質が見事に混練されました。
※写真右:「わあーー!」「すごーーい!」と歓声が。拍手をされる学生さんも!

尾藤先生、学生の皆様、授業に参加させてくださりありがとうございました。
先生曰く、「学生のうちからこの装置が使えるなんて恵まれているよ」とのこと。過去の職場では導入が叶わなかったご経験がおありだったそうです。

皆様の「わあーーー!」という歓声を聞き、私たちもとてもうれしかったです。これからも練太郎を活用して素敵な作品をどんどん制作なさってください!

インタビューを終えて
今回お邪魔したのは、周囲を公園に囲まれた広大な相模原キャンパス。
キャンパス内には和紙の原料である「コウゾ」「ミツマタ」、ネリの原料である「トロロアオイ」という植物も植えられていました。これらは紙漉き工房で実際の和紙作りに使用されているとか。
女子美アートミュージアム(美術館)のほか、作品制作に打ち込める設備・環境がとても充実していました。ワークショップも開催されているそうですので、ご興味のある方は参加されてみてはいかがでしょうか。


学校法人 女子美術大学
明治33年(1900年)に「芸術による女性の自立」、「女性の社会的地位の向上」、「専門の技術家・美術教師の養成」を目指して、美術教育を行う学校として創立。

●杉並キャンパス:東京都杉並区和田一丁目49番8号
短期大学部、芸術学部アート・デザイン表現学科、大学院美術研究科デザイン専攻、付属高等学校・中学校、法人本部、同窓会本部、女子美ガレリア ニケ

●相模原キャンパス:神奈川県相模原市南区麻溝台1900番地
芸術学部美術学科、芸術学部デザイン・工芸学科、大学院美術研究科、女子美アートミュージアム
●ホームページ:https://www.joshibi.ac.jp/

日本画材料 喜屋(人工岩絵具「エコ岩絵具21」販売)
●住所:東京都文京区湯島3-44-8
●ホームページ:http://kiya.ehoh.net/

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